物を多く持たない生き方を選んだ始まりについて

終活を始めてから、圧倒的に持ち物の量が減りました。
ただ、どちらかといえば、私は以前から物を多く持たない人間ではあります。

私が「物を持たない生き方」に興味を持ったのは、遡ること23年前。
仕事現場で一緒になり、後に友人となったスタイリストの女性がミニマリストだったこと。(※極端なミニマリストではない)
彼女のカバンは常に小さく、それでも必要な物をちゃんと収められる才能の持ち主。
で、その彼女、超有名アーティストのスタイリングを担当したりとキャリア絶好調だった時期にロンドン留学を決め、スパッと仕事を辞めて渡英。あれからもう20年。現在はロンドンで家庭を築きながらフローリストの事業を営んでいます。
彼女はとにかく身軽なのだ。物に支配されず、自分にとっての適量を知っていて、直感に従って臨機応変に人生をデザインしている彼女の生き方は、当時の私にはとても魅力的に映りました。
私も彼女のような身軽さが欲しい。そう願いつつも実際に動き出したのは約10年後。長年属していたエンタメ業界で力尽きてしまったことがきっかけとなりました。

当時の私は振付やステージ演出の仕事を生業としていて、ありがたくも仕事に恵まれて来ました。業界でキャリアを積んで、さらに良い条件の仕事のオファーをいただくようになり、金銭的にも非常に恵まれたと思います。一方で、若い才能たちが台頭して来たことへの危機感と嫉妬も芽生え、追い討ちをかけるように実力の枯渇を感じるようになり、自己嫌悪に苛まれ、それを自覚しながらも騙し騙し延命措置を施していたら、遂に体調を崩してしまった。これはさすがにまずいと思い、心身の健康を見直すために業界と距離を置くことにしました。

自営業たるもの、あらゆる方法で自分の存在をアピールし続けなければ過去の人として忘れ去られるのは当然。居場所がなくなることは覚悟しました。とりあえず今は自己肯定感を取り戻すことを優先しなければ。奥の隅の方にこびりついた業界への執着心を削ぎ落とす作業に取り掛かりました。その作業というのは、これまで関わった作品の資料(=過去の栄光)の断捨離と、嫉妬や嫌悪の対象になる情報を遮断することでした。

これが正しい処方だったのかどうかは今でもわかりませんが、これまでのストレスから自分を解放したことで健康的な生活を送るようになりました。健康的な生活はフィジカルとメンタルを整えてくれるようになり、その結果、体脂肪が減り、身体と見た目が変わるという副産物を得ることができました。自己肯定感も少しずつ取り戻し、このことをきっかけに「健康」を職業にする道が開けたのだから、これで良かったのだと思いたい。

物を多く持たない人間になったのは、ここが始まりました。ロンドンに渡った友人の生き方の影響はとても大きい。

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とはいえ、カインズで「無駄」を楽しめない人生もなんだかなぁ

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