食品添加物が悪だとも言い切れないなぁ

ヴィーガンの人気インフルエンサーが餓死したというショッキングなニュースが入って来た。ロシア国籍の39歳の女性インフルエンサーが何年にもわたって「ローヴィーガン」を続け、その結果、栄養バランスが崩れたのが原因とみられているようです。

ヴィーガンとは、植物性由来のものだけを食べる食生活・ライフスタイルのことで、ローヴィーガン(Raw Vegan)とは、それを全て「生=Raw」の状態で摂取する食生活のこと。彼女は、加熱処理がされていない完全ヴィーガン食を実践し、直近6年は水も飲まず、水分は野菜や果物のみから摂取していたとのこと。自身の信念を全うした人生だったとも言えるけど、拘り続けていく中で、そのストイックさが本来の目的とか、客観的思考とか、そういったものを見失わせてしまったのかな。栄養素不足による精神疾患もあったのかもしれない。

ストイックを拗らすキッカケは、至る所に転がっていると思う。私自身もストイックな食生活を営んでいた時期があったことを、ここで振り返りたいと思います。

エンタメ業界からウェルネス業界に鞍替えし始めた頃、健康について学ぶことが楽しくて楽しくて。オーガニックの食材や無添加という表示に拘っていたことがありました。陶酔していたとも言えるかしら。もちろんそれ自体は悪いことではない。私の場合は、「添加物は悪だ」と目の敵にする節があったこと、今思えばストイックを拗らす一歩手前だったと思えます。

ローフードについて学ぶ講座を受講したこともありました。結論から言うと、私とは相性が合わなかったので、途中でやめた。
ローフード(Raw Food)とは、生(=Raw)の野菜、果物、ナッツ類といった食材を、加熱しない状態で摂取することを提唱した食生活のこと。48度以下の熱を加えて調理された食材もローフードに含まれます。ざっくり言うと、生の野菜や果物が持つ食物酵素を効果的に摂取し、動物性食品、精製加工食品、48度以上に加熱した食物を摂取することを避ける、というのがローフードの食生活を提唱する人たちの考え方。(かなりざっくりです)
学習していく中で、その考え方については納得できることがたくさんありました。しかし、私の気持ちが一気に冷めたのはその後。

調理実習の際に作るレシピが「ズッキーニをパスタに見立てる」とか「カリフラワーをお米に見立てる」とか。すべて、「推奨しないもの」の外観を模写したレシピだったこと。私が偏屈なのかもしれないが、推奨しない食品に外観を近づけるとは、一体どういうことなんだ?と思ってしまったわけです。これって「推奨しない食品」から本当の意味で断っていることなの?どこか都合よく依存していることが、私はどうしても解せなくて。そこで一気に気持ちが冷めてしまい、途中でやめた。やりたい人だけがやればいい。私はいいや。という結論に。とはいえ、ローフードの有効性は学べたつもりなので、私自身の判断と価値観をもとに、ほどほどの塩梅で生活に取り入れています。食べ物に気を遣った食生活は維持していますが、昔ほど固執しすぎず、お金も時間もかけすぎず、といった具合でしょうか。食品添加物だって摂取するし。全てをクリーンな食生活にするにはお金も時間もかなり消費するので、私の生活レベルでは現実的ではありません。
食品添加物は極力避けたいし避けているけど、それでも食品添加物に感謝している面もあって。私は食品添加物が悪だとも言い切れない。それはどういうことかと言うと。

仕事で高齢者と接する機会が多いこと、それから、自身の両親が高齢になって生活のサポートをする場面が多くなったことをきっかけに、食品添加物に対しての考え方が少しずつ変わって来たように思います。摂らなきゃ摂らない方が望ましいものかもしれないが、高齢者ができるだけ自助で家事をして心身豊かな生活を営むためには、一定期間保存できる惣菜やレトルト食品は彼らの味方になります。体力的に頻繁に買い物へ足を運べない高齢者の場合は、保存の効く食品はとても役に立つし、冷凍食品やレトルト食品があることで、それを自助でお皿に盛り付ければ、それだけで日常動作が成立する。ちゃんと生活をしている感覚を味わうことができる。これが如何に大事か、高齢者の方々と接している中で学んだことであります。
人は大小問わず成功体験と達成感があることで豊かな生活が営めますし、それにはできるだけ高齢者が自助で生活できる環境づくりが大切なんだと、常々思います。レトルトのパックを開封して、お皿に盛り付けて、レンジに入れてチンして、テーブルに運んで美味しくいただく。その動作は、ローフードに徹するより、無添加に徹するより、時と場合によってはそっちの方が心身ともに健康でいられる気がしてならない。そんなことを感じたんですよね。私が高齢者と向き合う中で、どれだけ食品添加物に支えられて助けられて、相手の笑顔を見てきたことか。食品添加物バンザイ!とは言わない。添加物が入っていない食品の方が身体に負担がかからないのは明らかですし。ストイックを拗らせず、良い塩梅がいい。
食に対しての思想は十人十色で良いと思う。それで心身が幸せならば。本当にそう思う。

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身体の小さな変化に気づけるから、私はラジオ体操第1&第2を毎日同じ時間にやる