急がば回れ。筋トレの効果を出すための筋トレ

長年苦楽を共にした習慣と癖を直すには時間がかかります。
あいつらは非常に手強い。

幼少期に外国語を習得するのと、大人になってから外国語を習得するのでは、どちらが飲み込みが早いか。

答えは明らかですよね。特に発音なんて完全に前者。
大人になってからの発音学習は、日本語アクセント呪縛からどうにもこうにも抜け出せず、独自の発音に仕上がってしまいがちに。

それは、今日まで積み重ねて来た習慣や概念が「癖」として現れ、新しい情報と知覚の入り口を妨げてしまうのが原因の一つにあると思います。
トレーニングの動作にも、同じことが言えます。

事例をひとつご紹介。
下半身を引き締めたくて自己流で筋トレを始めたら、次第に太ももが肥大していく・・・
というお悩みを抱えたお客様が、LIMを訪ねてくださいました。

ご自宅で行なっている筋トレメニューの一例を伺ったところ、以下の通り。
※( )はターゲットマッスル

・ヒップヒンジ(ポステリアキネティクチェーン=脊柱起立筋、大殿筋、ハムストリングスなど)
・ワイドスクワット(内転筋群・大臀筋・大腿四頭筋)
・アダクション(内転筋群)

下半身の引き締めには非常に良いチョイスではないかと。


では何故?
何故、太ももが肥大化してしまうのか。
そこを探るところからスタートです。

まずは、身体評価。
関節可動域のチェック。
可動域も十分にあり、柔軟性に問題はありませんでした。(右の臀部だけ少し硬かった)

次に、動作チェック。
ご自宅で行なっている筋トレを再現してもらいました。

すると!
全てにおいて、大腿四頭筋(前もも)がフル稼働。
ターゲットマッスル(本来効かせたい筋肉の部位)ではなく、ほぼ大腿四頭筋が働いてしまっていることが判明しました。

それは何を意味するか。
正しいフォームで筋トレが行えていなかったということが言えます。
それによって代償動作が起きている。つまり、大腿四頭筋ばかりに負荷がかかっていたということ。

※代償動作とは本来の動作や運動を行うために必要な機能が十分に使えず、他の機能で補って動作や運動を行うこと。

このことからも、太ももが肥大していく原因の一つが見つかりました。

私はお客様の「所作」も不意打ちチェックします。
座り方、立ち方、足の踏み込み方など。

不意打ちチェックをしたことろ、
・歩行で大腿四頭筋に力が入る
・前傾姿勢の傾向があり、大腿四頭筋に負荷がかかっている

日常的に大腿四頭筋が過度に働いている状態といえます。

では、次にクリアしなければいけないこと。
正しいフォームをマスターして代償動作をなくすこと。
すなわち、「癖」を取り除く作業です。

これがいちばん大変。
なぜなら、長きにわたって無意識に習慣化されて来た動作、そして所作を根本から取り除く作業ですから。
さすがに今日明日で何とかなるものではありません。
地道な作業の幕開けです。

まず、正しいフォーム(角度や重心のかけかた)を知って、本来のターゲットマッスルが使われている実感を持つまでその動きを調整&反復すること。

しかし、そこで勃発する「あるある例」が、「正しいフォームに修正すると、とたんにその動きができなくなってしまう」という現象。

これ、本当に筋トレあるあるです。私自身もそういう経験、あるあるです。

今回のケースにおいて、大腿四頭筋ばかり使ってしまう原因を探っていくと「中臀筋」を上手く使えていないことに一因あると分かりました。
それは何を意味しているかというと、「中臀筋の筋力が弱い」ということ。

中臀筋が弱いから、全て大腿四頭筋に頼ってしまうのが一因だと考えられます。
(これはあくまで今回のお客様のケースであり、代償動作の現れ方は多種多様です。)

それならば、どうすればいいか。

中臀筋を鍛えること。

戦いはここからRESTARTです。

今までご自宅で行なっていた筋トレメニューは、下半身を引き締めるには何れも効果的だと思います。しかし、それを正しいフォームで行うのが困難であれば、まずはそれができるようにするための「準備」をすること。

代償動作を減らすために中臀筋を鍛える。
中臀筋を鍛えて代償動作を減らす。

とにかくここからRESTARTとお伝えしました。道のりは長いと思います。


でも、

急がば回れ!

これが一番の近道ですよ、本当に。
筋トレで効果を出すには、筋トレができる身体をつくること。

こういう問題を洗い出して軌道修正をしていくのは私たち指導者のお仕事。

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