昨日の当たり前は今日の非常識
待ってました。
ジェーン・スーの新刊「ひとまず上出来」が刊行。
今作も活力と諦観をありがとう。これだけ我々中年の悲喜交々を言語化してくれたら大満足。
全エピソードに膝を打ちまくって膝蓋骨脱臼しそう。全膝が泣いた!
スー氏と私は付き合いが長く、彼女がレコードメーカー勤務の会社員だった頃からの付き合いになる。彼女はその頃から弁が立ち、面白く、物事の分析力に長けていたっけ。いまの彼女のポジションは、なるべくしてなったものだと確信している。
さて、エッセイの中身について。
どのエピソードも最高なのだが、個人的に響いたのが「昨日の当たり前は今日の非常識」(188ページ目)
個人的な、ある出来事を思い出したから。
もう4年前になるだろうか。都内のお洒落なサラダボウル専門店にスー氏と立ち寄った時のこと。色鮮やかなオーガニック野菜たちが美しく盛り付けられている、それはそれはお洒落なサラダボウル。眺めているだけでも長谷川理恵になれそう。
店内は女性のお客さんが多い中、清潔感溢れるスタイリッシュな若い男性がお一人でサラダボウルランチをしていた。彼を見て、私は小声でスー氏に一言。
「意識高いね〜」と少しの揶揄を含ませた意地悪な笑顔で。
すかさずスー氏が私を叱る。
「アンタそういうのマジでやめなさい。そういう無自覚な偏見と差別意識は自分に返って来るんだよ」
ハッとした。そして己を恥じた。
これまで旧来型のステレオタイプな女性像にフィットせずに後ろめたさや居心地の悪さを感じながら生きて来た私自身が、なんと無意識に男性に対して同等のことをしていたわけで。無自覚にも程がある。
男性だって旧来型のステレオタイプな男性像に居心地の悪さを感じているケースだってあるわけだ。「男らしくしろ」とか「男のくせに」とか。男がお洒落なサラダボウルを一人で食って何が悪い。そんな当たり前なことに意識を向けられなかった4年前。あの時スー氏に子供のように叱られておいてよかった。
私が彼女の友達の中の一人であることに感謝。